京都 四条烏丸の歯科医院 RIMO dental clinicの院長 小川智功です。
2014年に右上の歯が外れたと患者さんがご来院されました。当時は、きちんと治療したとしても長くは持たないと診断しました。しかし、少しでも長く使えるようにとむし歯の徹底除去を行い、レジンで支台築造し、一時的なプラスチック製のクラウンを装着し、経過観察としました。それから4年後、残念ながらその歯が割れて、歯肉が腫れてきました。
この方はこの4年間で、晩期残存していた乳犬歯(後ろから5番め)にインプラント治療が必要となり、当院でインプラント治療を行いました。(2017.11.18を参照)その時も、この歯(後ろから3番め)の予知性が不十分であったためにインプラント治療を提案した背景がありました。この方にインプラント治療ではなく、ブリッジで対応するとなると、後ろから3番めと5番めの2本の欠損に対して、4本の歯を切削する事となります。すなわち2本の欠損に対して、6本のブリッジで対応する事になります。かなり長い連結したブリッジは歯磨きがしにくく、6本のうちの1本でもむし歯などの問題が起こった時に、全てをやり変える必要が出てきます。前回乳犬歯部にインプラントは行なっていますので、3本分のブリッジで対応することとなる上で、再度治療計画書を作成し、患者さんにご提案致しました。
患者さんはインプラント治療を選択されました。破折した歯を抜歯し、骨組織の再生手術を行いました。粘膜の治癒を待ち、CTシミュレーションを行いました。手術計画書を作成し、患者さんにご提案致しました。
患者さんの体質的に、インプラント治療が問題なく行える事が既に分かっていたので、今回も問題なく治療を行いました。手前の歯のセラミックインレーにもだいぶ負担がかかっていたようで、取れかけていました。一つ奥の銀歯も度々違和感を訴えられる事があったので、両方ともこの際にしっかり再治療を行いました。
治療後の写真です。奥から3番目と5番目がインプラントです。
初診時からの比較です。
僕は歯が生体にとって一番良い素材であり、できる限り保存すべきだと考えています。「まずは歯を最後まで使い切りましょう。少しでも長く使えるよう、セルフケアとメンテナンスを頑張りましょう。それでも歯がだめになってしまって治療が必要になったら、その時に一緒に進んでいけばいいと思います。」と、どの患者さんにも伝えています。
この患者さんと初めてお会いしたのは2014年でしたが、その時々で患者さんの要望は変わります。初めてお会いしたときは、『歯を抜かないで使える状態にしてほしい』との要望だったので、状況をお伝えした上で、歯を使える状態にしてお応え致しました。割れてしまった時のご要望は『今後、不安の少ない治療を選択したい』とのご要望でした。2014年の時点で、2本の歯にインプラント治療を提案し、行なっていたとしたら「あの歯、まだ使えたんじゃないだろうか」と僕も患者さんもお互いに思ったのではないかと思います。『歯を最後まで使ったから、次に進むことができた』そう思える治療でした。患者さんには5年間ずっとご通院頂いたわけではなく、その6割は要望のあった治療を終了し定期検診していた期間です。写真を比較すると、5年余りの時間の中で患者さんに起こった事象に対して、一番ベストな選択をできたと思い、歯科医師として感無量の気持ちです。
歯が抜けたところに、必ずインプラントが必要な訳ではありません。今回はインプラントで1本ずつの歯の状態にすることができたので歯磨きもしやすくなり、かぶせの咬頭をたてることができるので咀嚼効率の高いかぶせを装着する事が可能になり、予知性も期待する事ができます。この患者さんの4番目の歯に、何年も先にもしもの事があったとしても、前後のインプラントでブリッジを作成することができます。その時に身体的に外科処置が行えない状態であっても、歯がない状態を避ける事ができます。
患者さんにはとても喜んで頂けたので、嬉しかったです。